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心理学部
2016.08.08

私たちはどういう時に説得されるのか?

 私たちの日常生活の中で,説得したり説得されたりということはよくありますよね。たとえば,恋人になってもらうために告白するのもある意味の説得ですし,友達と食事に行く時に自分の食べたいものを食べようとはたらきかけるのもある意味の説得です。
 社会心理学という分野では説得に関する研究がなされており,どのような要素が説得効果を高めるのかを検討しています。たとえば,テレビのCMでお気に入りのアイドルが宣伝をしていると思わずその商品を買ってしまうように,説得する人の魅力によって大きな説得効果が得られることがわかっています。ただ,みなさんはこんなことは感じないでしょうか。「魅力的な人に説得されたら説得されてしまうこともあるけれども,そうでないこともあるよね」「世の中には魅力的な人に説得されやすい人とそうでない人がいるんじゃないの」 確かに説得されやすさの個人差というのもありますが,同じ人がある時には魅力的な人に説得され,ある時には説得されないということがあるのです。
 私たちは,説得される際に与えられた情報を処理し,その結果として受け入れたりするわけですが,その情報処理の方法に2つの種類があることをペティとカシオッポは明らかにしました。1つは自動的処理と呼ばれていて,あまり考えない処理モードであり,もう1つは統制的処理と呼ばれていて,よく考える処理モードです。私たちがどちらの処理モードであるかによって,説得に影響を与える要素が変わってきます。自動的処理では考えませんから「この人魅力的だなあ」という簡単な要素で説得されてしまいます。でも統制的処理ではよく考えますので,人の魅力ではなく主張している内容で説得の良し悪しを決めることになります。
 では,どのような時に2つの処理モードの違いが生じるのでしょうか。それは,説得に対する動機づけと能力で決まります。たとえば,その説得が自分にとってとても大切なことであれば「魅力的な人に勧められた」からといって,簡単に従うわけにいきません。でも,そんなに大切なことでなければ従ってしまって構わないわけです。ここでの説得の大切さは動機づけに影響を与える要素です。
 人を説得するような単純に思えることでも,よくその仕組を考えてみると不思議な特徴が見出されます。それらの仕組みを明らかにするのも心理学の役割なのです。
 
伊藤君男(社会心理学)