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心理学部
2014.07.07

人文学部心理学科リレーエッセイ NO.01

心理学科ではガクブログを通してリレー形式で皆様にエッセイをお送りいたします。
記念すべき1回目は心理学科学科長の河野教授です。

 

「夏が来た」の心理学

満開の入学式の後、心理学科が発足して約3ヶ月が過ぎた。新入生は、忙しい新学期ガイダンス、京都への祖山参拝、新入生歓迎会と行事の連続から大学生活が始まって、授業が今や佳境に入っている。新入生諸君の個性はさまざまだが、基本的にみなうまく大学になじんでいる様子だ。充実した四年間を過ごしてほしいと心から願う。これを書いている今(6月下旬)は梅雨空で、あまりすっきりしない天気が続いているが、そろそろ沖縄では梅雨明けしそうだとの声も聞こえてきた。もうすぐ名古屋地方には暑い暑い夏が来る。夏は明るく楽しく開放的な季節だ。

ちょっと心理学っぽく分析すれば、まず、梅雨が明けて気温上昇が最大化する、夕方以降も寒くないので活動可能な時間が大幅に延長するといった物理的条件がある。夏休みが近づいたりお祭りやイベントが開催されたり、娯楽的な時期に入るといった社会的な要因もある。服装が薄着になってリラックスした雰囲気になることも影響があるだろう。夏はこれらの要因が複合して私たちを開放的な気分にさせる。

ところで、気分によって私たちの見方や考え方は影響を受ける。たとえば、気分が暗くなりやすい雨の日はあいまいな物事に関する私たちの判断が晴れの日に較べて悲観的になることが知られている。何かに失敗したりして暗い気分になった時は、物事の悪い側面に注目しやすくなり、ネガティブに考えやすくなる。これは、私たちが物事を判断する場合に、自分の感情と本来は無関係なはずのことがらについてもある程度自分の感情を手がかりにしてしまうからだと考えられる(この説を「情報としての感情affect as information」仮説という)。一方、幸福感、喜び、興味、愛情など、ポジティブな感情を感じると自然にものの考え方や行動が積極的になって創造性や受容性が高まり、結果的に自己成長が促されるとも言われている(「拡張-形成理論」)。

明るい夏の訪れとともに高まるポジティブな気分を利用して、前向きに物事を考え、積極的に行動して、自分の幅をどんどん広げよう。

河野和明(感情心理学)