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心理学部
2015.02.10

人文学部心理学科リレーエッセイ NO.06


精神的ストレスと皮膚

まだまだ寒い2月。冬は寒さに加え乾燥に悩まされる人も多いのではないでしょうか。保湿のためのクリームを塗ったり、加湿器を使ってみたりさまざまな対処をされていることと思います。
皮膚は外界からの刺激を直接受ける臓器であることから、湿度に加えて、汗をかくことや気温の変化などといった物理的刺激に対して敏感に反応します。では、皮膚は物理的刺激のみに反応しているのでしょうか?

実は、皮膚は物理的刺激のみに反応しているわけではありません。私たちが日常生活を送るうえで経験する精神的なストレスにも反応してしまうのです。
精神的ストレスと皮膚

少し古い研究になってしまいますが、精神的ストレスと皮膚の関係がよくわかるものがありますので紹介したいと思います。アトピー性皮膚炎を患う成人とそうでない成人を対象に人前でのスピーチと暗算課題を実施したところ、成人のアトピー性皮膚炎患者さんはそうでない成人と比較してストレスを受けることで生じる視床下部-下垂体-副腎皮質系の反応が強く認められることが報告されました。
(Buske-Kirschbaum、 Geiben、 Höllig、 Morschhäuser、 & Hellhammer、 2002)

つまり、精神的なストレスは湿度や気温の変化といった物理的刺激に加えて皮膚を攻撃する要因になりうるということが実証されたわけです。この研究はアトピー性皮膚炎という皮膚疾患の患者さんが対象となっていますが、皮膚疾患を持っていなくても精神的ストレスによって皮膚がダメージを受けることはありうることです。ストレスと蕁麻疹(じんましん)の関係もその一つと言えるでしょう。

このことから、皮膚の状態は心の状態を表していると考えることができるのかもしれません。もちろん精神的ストレスという一つの要因で問題を解決することはできませんが、皮膚の状態が良くないときいにはしっかりとした皮膚科的な対処に加えて、少し自分と向き合ってみることで解決の糸口が見つかるかもしれません。心も体もいたわりながら寒い2月を乗り切りましょう。

樋町美華(臨床心理学)