教育

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2021.05.17

教育学部の学生が放射線教材を開発。 コンテストで栄えある賞に輝く!

2020年度、教育学部3年生の瀬角唯斗さん、牧原和美さん、鈴木望友さんが公益財団法人日本科学技術振興財団主催「放射線教材コンテスト」に参加しました。このコンテストで募集していたのは、小中高生が放射線について学び、理解を深めるための教材。小学校教員を志望する3人は小学生向け教材の開発に力を注ぎ、結果、3人とも優秀賞に輝きました。

そして、彼らが4年生になった2021年春、ゼミの指導教員・山岡武邦先生(教育学部 准教授)も交えて座談会を開催。教材開発というチャレンジを振り返り、学んだことや今後の抱負などを語り合いました。

教員志望の学生が教材づくりに挑戦

編集部:みなさん、放射線教材コンテストでの受賞、おめでとうございます! 瀬角さん・牧原さんペアは優秀賞と特別賞(ディスカバリー・ジャパン賞)、鈴木さんは優秀賞に輝いたそうですね。2020年度は全国から101件の応募があって、そのうち優秀賞に選ばれたのはわずか9件。素晴らしい快挙ですね!

学生たち:ありがとうございます!!!

編集部:この放射線教材コンテストに参加したきっかけは?

山岡先生:文部科学省委託事業「放射線に関する教職員セミナー及び出前授業」の仕事の関係で放射線教材コンテストの情報が届いて。ゼミの学生たちは教員志望ですから、興味があるかなと思い声をかけたのです。

鈴木さん:山岡先生からコンテストのことを聞いて、自分で教材を開発できるなんておもしろそう! やってみたい!と感じました。わりと気軽な気持ちで挑戦したので、まさか入賞するなんてビックリ(笑)。

牧原さん:「放射線」ってなんとなく知ってはいるけれど、あまり身近なものとは思っていませんでした。このコンテストを機に、放射線についてきちんと学びたいと考えて参加を決めました。国内外の原子力事故に関するニュースを目にしていて、興味はあったんです。

瀬角さん:自分はもともとものづくりとか工作が好きだったから、参加しました。しかも、教材づくりは、教員になったときに必ず役立つ経験になるから、ぜひチャレンジしたいなと思いました。

編集部:これはゼミ活動の一環だったのですか?

山岡先生:いえいえ、ゼミでは理科教育・科学教育の学修や研究に取り組んでいますが、このコンテストの応募は自由。学修意欲の高い学生に、挑戦のチャンスをあげられたらと思っていました。

編集部:なるほど。それでは、教材開発はどのように進めたのですか?

瀬角さん:山岡先生のサポートのもと、自分たちが放射線について学ぶことから始めました。

山岡先生:コンテストの募集締切が2020年9月末でしたから、夏休みにまず放射線に関する講義を行ったのです。

牧原さん:放射線は、実は日常生活にあふれています。でも私はぜんぜん知らなかったんだなって、講義を通して気づきました。目には見えないから、なかなかイメージがつかない。それを子どもたちにわかりやすく伝えるにはどうすればいいんだろうって、考えることが一番難しかったですね。

鈴木さん:そうそう。子どもたちがわかるようにかみ砕くには、私たちが放射線について深く理解していることが大前提。この経験は、“わかりやすく教える”という教員に必要な力を鍛えることにもつながったなと思います。

山岡先生:放射線という目には見えないものを捉え、児童が理解できるよう教え方を考える経験は、教員になったときに理科や他の教科の授業づくりで応用できると思いますよ。

放射線についてどう教えたらいい?

編集部:それぞれどんな教材を考案したのですか? 瀬角さんと牧原さんはペアで取り組んだのですよね?

牧原さん:はい。2人でアイデアを話し合っているうちに、一緒に制作しようかってなったんです。私たちは小学校高学年向けのボードゲームとして、外部放射線被ばく低減ゲーム「距離、遮へい、時間」を考案しました。

瀬角さん:着目したのは、放射線による被ばく低減の3原則「距離」「遮へい」「時間」です。距離を取ると放射線の被ばく線量が減る、遮へいによって放射線が通る量が少なくなる、放射線の近くにいる時間を減らすと被ばくする確率が少なくなる。そうした3原則を体感的に学べたらいいんじゃないかなって、ボードゲームを考えたんです。

牧原さん:すごろくのようにサイコロを振ってコマを進め、被ばく線をより少なくしてゴール地点をめざすというゲームです。被ばく低減の3原則とともに、日常生活で受ける放射線量についても学べるようにしました。

編集部:立体的で、ユニークなボードゲームですね。中心にスタートがあって、ここに放射線物質が置かれているんですね。

瀬角さん:そうです。放射線物質のあるスタート地点から離れていくことで、3原則の「距離」を表現できると考えました。そこから「じゃあ、立体にしたらおもしろいんじゃない?」と思いつき、階段状にしたんです。

牧原さん:事故由来の放射線やレントゲンなどの医療放射線だけでなく、自然界にはもともと放射線が存在しています。地球には、絶えず宇宙から放射線が降り注いでいますから。国によって差はありますが、日本では一人あたり年間2.1ミリシーベルトほど。このゲームではそうした基礎知識とともに、放射性物質の種類による違い、遮へいによる効果などを理解できるようにしました。

瀬角さん:このボードゲームは対戦形式ではないので、複数人でも一人でもできます。

編集部:放射線についてしっかりと学べるし、ボードゲームとしてもおもしろいですね! 続いて、鈴木さんが考案した教材についても教えてください。

鈴木さん:私は小学校低学年向けのカードゲーム「この子だぁれ?」を考案しました。子どもたちの間で流行っているカードゲーム「ナンジャモンジャ」を参考にして考えました。

編集部:カードをめくって謎の生物に名前を付けて、同じカードが出たらその名前を叫ぶっていう、人気ゲームですね。カードの絵がファンシーで。

鈴木さん:そうです。私が制作したカードも、子どもたちの目を引くようにちょっと不思議だけどかわいらしいイラストにしました。描いたキャラクターたちは、身のまわりにある放射線が使われたもの。レントゲン、がんの放射線治療、新薬開発、空港の荷物検査、米の品種改良、じゃがいもの発芽防止、害虫駆除、タイヤのゴム強化など。さまざまなところに放射線が活用されているんだなって教材を制作しながら実感しました。

編集部:本当に幅広いところに放射線が使われているんですね! 描かれているそれぞれのキャラクターも、とっても表情豊かでおもしろいですね。

鈴木さん:ありがとうございます。遊び方はナンジャモンジャと同じ要領ですが、遊んだ後、副読本を配って調べ学習して、身のまわりの何・どこに放射線が使われているのかを学んでもらうことを目的にしています。

編集部:子どもたちの知的好奇心をうまく刺激するカードゲームなんですね。教材として他の教科などにも応用できそう。

鈴木さん:そうなんです。だから私は卒業論文として、理科の生物分野の教材になるカードゲームを制作しようと考えています。

編集部:コンテストへの挑戦が卒業論文にもつながる経験になったんですね。

鈴木さん:はい。卒論のテーマ決めって大変だから、未来がちょっと明るくなった気分です(笑)。

先生のサポートのもと、確かな成果を掴む。

編集部:教材開発という新しい挑戦に取り組む学生たちに対して、山岡先生はどんなサポートを大切にされたのでしょうか?

山岡先生:学生たちが将来、小学校教員になることを想像して、学校現場に役立つ学びをしてほしいと考えてサポートしました。放射線というと、一般的に恐いイメージがありますよね。放射線の教材を授業に取り入れようというと、敷居が高く感じる先生方も多いんです。しかし、大切なのは「正しく理解して、正しく恐れる」こと。学生たちには、そのための教材を考案してほしいとアドバイスしました。

鈴木さん:山岡先生はかなり忙しい方なのですが、時間を一生懸命つくってくださって、細かく相談にも乗っていただきました。コンテストは、教材の概要をまとめた書類を9月末に提出し、11月に入選したと結果が来て、それから教材の実制作に取り掛かり、活用方法のPR動画を撮るという流れでした。その数か月間、原稿の添削やカードの下絵チェック、動画撮影のアドバイスなど、山岡先生は本当にたくさんのサポートをしてくださいました。

編集部:それはとても心強かったですね。

鈴木さん:そうなんです。いろいろな視点から、的確なアドバイスをいただき、「なるほど!」の連続でした。この感覚と経験を、将来、小学校教員になったときに生かしたいと心から思っています。

牧原さん:私も、本当にいい経験ができたと思っています。山岡先生が放射線教材コンテストを紹介してくださったことにも、親身に支えてくださったことにも、感謝しています。

瀬角さん:ボードゲームを制作するにあたって、放射線量の変化に関する実験を行ったんですが、そのときも山岡先生が専門的な実験装置を紹介してくださって、とてもありがたかったですね。アドバイスが本当に的確。それぞれの力をうまく引き出して支える、そんな教員に自分もなりたいなって思いました。

それぞれの目標に向かって、新たな一歩を。

山岡先生:私は、教育学部の教員になる前、高校教員として長く働いていたのですが、そのときも授業や部活動とは別に、やる気のある生徒には課題研究のチャンスをあげていました。一人ひとりが持っているさまざまな可能性を広げたいという思いが、ずっとあるんです。何かきっかけがあれば、人は大きく成長していきますからね。

編集部:成長のチャンスを、教え子たちに届け続けているのですね。学生のみなさんは、放射線コンテストに参加し、栄えある賞も獲得した今、どんな思いを持っていますか? 今後の抱負や目標も聞かせてください。

瀬角さん:教材開発のコンテストで賞をいただけたことが、教員をめざす自分自身にとって非常に嬉しかったです。教材開発を通して多くのことが学べましたし、何より制作過程が楽しかった!教材の紹介動画を撮影したとき、あまりにひどい手振れで笑い合ったこともいい思い出です (笑)。動画撮影・編集のスキルも鍛えられました。卒業後、教員になったときにも授業や学校行事などで生かしたいと思っています。教材やいろいろなものを自分でつくれる、クリエイティブな発想の教員をめざしたいですね。

牧原さん:私はものづくりがすごく苦手なんですけど、その分、アイデア出しや文章作成、データ収集・分析など自分にできることをして教材開発に励みました。そんな経験は、すごく自分のためになったなと思っています。教員の仕事も一人だけで成り立つものではなく、いろんな強みを持った教員同士が協力して子どもたちの成長を支えていくことが大切ですから。チームワークの大切さを実感したことも、今回の大きな学びでしたね。また、エネルギー環境教育への関心が高まったので、これから卒業論文で知識や考察を深めていきたいと考えています。

鈴木さん:私は今回のコンテストを通して、自分に自信がついたのが一番大きなことでした。優秀賞をいただけたというのが、「自分もやればできるんだ!」という思いにつながっています。ゼミの仲間や山岡先生と一緒に挑戦できたこの経験を大切にしながら、今後もいろんなことを学び続けたい。教員になったとき、子どもたちとともに楽しく学べるような授業づくりができたらいいなと、今は考えています。

山岡先生:今の4年生はコロナ禍でまだ教育実習に行っていないので、授業やゼミでどれだけ教育を語っても、子どもと向き合う実感がなかなか得られないと思います。だからこそ今回、教材としっかり向き合った経験は、子どもたちと向き合っていくときの力になるでしょう。これからも大いに学び、チャレンジしてください。いつでも応援しています。

学生たち:ありがとうございます! がんばります!

編集部まとめ

コロナ禍で教育実習に行けなくなるなど、学びに制限がかった2020年度。困難な状況にも関わらず向学心を燃やして教材開発に挑んだ学生のみなさんは、受賞だけにとどまらず、目には見えない確かな成果も手にしていました。そして、そんな学生たちを親身に支えた山岡先生。「教え子の成長が何より嬉しい」という思いは、教員志望の学生たちの心にも引き継がれ、未来を担う子どもたちの成長にもつながっていくのだと感じました。瀬角さん、牧原さん、鈴木さん、山岡先生、ありがとうございました!