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2021.05.18

音声SNS「Clubhouse」が世界に急拡大。人々がSNSにハマる理由を心理学から探る。

最近では音声SNS「Clubhouse」が話題になるなど、人気が止まらないSNS。なぜ多くの人たちがSNSにハマるのか。その理由について、心理学部の伊藤先生と考察しました。

Profile

伊藤君男 先生

心理学部 心理学科 教授。専門分野は実験心理学、社会心理学、認知心理学。脳波を指標とした実験的研究からインタビューデータを分析した質的研究まで、さまざまなアプローチで“心”の不思議に迫っています。

人間は本能的にSNSを求める!?

編集部:伊藤先生、本日はよろしくお願いします。さっそく本題ですが、どうして人はSNSにハマるのでしょうか? TwitterやInstagram、TikTok、さらに新しいものではClubhouseなど、いろんなSNSが次々と登場しています。

伊藤先生:多くの人がSNSにハマるのは、そもそも人間が“社会的な生き物”だからでしょう。人間は仲間と協力して“社会”を形成する生き物です。その社会の中でうまく生きていくためには、“他者とつながること”が欠かせません。

編集部:なるほど。人間は本能的なところで他者とのコミュニケーションを重視しているから、SNSに熱中してしまうんですね。

伊藤先生:そのとおり。コミュニケーションは、人間がずっと昔から大切にしてきたものです。コミュニケーションの基本はFace to face。面と向かって話し合うことですから、双方向のやりとりができるSNSは、人間の根源的なコミュニケーションのあり方に近いといえます。だから、国・地域や年代を問わず多くの人がSNSにハマっていくのでしょう。

編集部:双方向コミュニケーションが、SNSの重要ポイントなんですね。

伊藤先生:そうです。人間が小さな社会でやっていたコミュニケーションを、コンピュータやインターネットを介して広い範囲でできるようになったのがSNSです。介在しているものが違うだけで、Face to faceのコミュニケーションとSNSというのは、実は形態としてはとても近いと考えられます。テクノロジーの進化によってSNSが一般的なツールになり、人間にとって自然なコミュニケーションである双方向のやりとりが、いつでもどこでも実現できるようになりました。

Clubhouseの人気のカギは“声”にあり!

編集部:コミュニケーションツールはどんどん変化していますが、その根本にある「人とつながりたい」という気持ちはいつの時代も変わらないのかもしれませんね。

伊藤先生:そうですね。手紙も電話もSNSも、そこに込められた人の思いは共通しているでしょう。

編集部:2020年に誕生したClubhouseが今、世界中でユーザー数を増やしていますが、音声に特化しているところが人気のポイントなんでしょうか?

伊藤先生:そうですね。お互いの“声”で対話できるツールだからでしょう。話すことは、人間の最も根源的なコミュニケーション。文字はあくまでも、文化や教育の産物です。音声によるコミュニケーションの方が、テキストによるコミュニケーションよりも気持ちが伝わりやすいと考えられます。

編集部:確かに。声のトーンや大きさ、話し方などから、文字だけではわからない微妙なニュアンスも感じ取ることができますね。

伊藤先生:それと、広範囲の人たちと会話できることもClubhouseの魅力だったのかもしれません。これまでも音声によるコミュニケーションは、1対1で話す電話やテレビ会議などのグループ通話がありましたが、個人が不特定多数の人とコミュニケーションできる音声ツールというのはなかったと思います。こういった側面も、Clubhouseが人気となった理由だと思います。

編集部:Clubhouseは招待制でレア感があることも人気が高まった理由の一つかなと思いましたが、心理学的にはいかがでしょう?

伊藤先生:社会心理学から考察すると、「手に入らないものを手に入れたい」という心理的欲求が人間にはあります。そして、それは、ハードルが高くなればなるほど、得られたときの満足度は高くなり、ターゲットとなるものの価値や魅力も上がります。ですから、招待制という仕組みは、多くの人々の興味を引くきっかけとしては成功だったと思います。

自分に合ったSNSを無理なく使うこと。

編集部:Clubhouseは日本でも急速に人気を集めているものの、ここ最近はラジオやYouTubeのような既存メディアとあまり変わらないツールになっているような気がします。芸能人が部屋を開設して、一般の人がそれを聞くだけという……。

伊藤先生:あるテーマに関する知識や自分の考え・思いなど、発信する情報を持っていないとなかなか発言しにくいですよね。私は研究者の仲間とClubhouseを使っています。各々専門分野があり、共通の議題もあるので、語り合うのが楽しいですね。ここでしかできない裏話もできます(笑)。SNSはいろんな種類があってそれぞれ異なる特徴や魅力があるから、自分に合ったSNSを使えばいいんです。

編集部:なるほど。Twitterは短いテキスト、Instagramは写真など、SNSといっても表現方法は違いますからね。

伊藤先生:例えば、学生たちはおいしそうなラーメンの写真やかわいいメイクの写真をスマホで気軽に撮影してInstagramにアップしています。学生にとってスマホのカメラは身近なツールなので、ラーメンやコスメの魅力が伝わる写真を上手に撮りますよ。

編集部:そうやって自分が好きなものを活用して、双方向コミュニケーションを楽しめるといいんですね。

伊藤先生:SNSは「人とつながりたい」という人間的な欲求に根差しているので、これからも新しいSNSがどんどん生まれてくるでしょう。でも、一人ひとりの発信力や得意な表現方法は違いますから、一部のユーザーに限られるSNS、誰もが簡単に使いこなせるSNSなど、差が出てくると思います。ただ、SNSはあくまでもコミュニケーションツールの一つにすぎませんから、無理なく楽しくできる範囲で活用すればいいんです。

学生たちの学びをSNSからも応援。

編集部:伊藤先生は学生とのコミュニケーションにSNSを活用していますか?

伊藤先生:していますよ。

編集部:学生たちは、面と向かっては言えないことも、SNSなら伝えられる、なんてことがありますか?

伊藤先生:どうでしょう。SNSなら何でも言えるわけではないかもしれませんが、研究室を訪ねる、電話する、メールするということに比べると、使い慣れているSNSなら気軽に連絡しやすいでしょうね。SNSのおかげで、一人で抱え込まず相談や質問ができるという学生もいると思います。

編集部:どんなSNSを活用していますか?

伊藤先生:Twitter、Facebook、Instagram、Clubhouseなど。私は社会心理学、特にコミュニケーションを専門にしているので、いろんなSNSを使うようにしています。

編集部:学生のサポートにも研究にも、SNSを活用しているんですか?

伊藤先生:できる限り学生たちを相互フォローして、一人ひとりの興味・関心を理解したいなと思っています。必要に応じて、大学が発信している重要な情報のリマインドもSNS上でやっていますよ。あとは、私の日常もちょっと出すようにしています。わが家の猫の写真とか

編集部:いいですね! 先生に対して親しみを感じるきっかけになります。社会心理学を専門とする伊藤先生にとっては、SNSが教育・研究の大切なツールにもなるんですね。

伊藤先生:学生たちにはSNSでのやりとりを通してマナーや情報リテラシーなどを学び取り、社会で求められる発信力やコミュニケーション能力も磨いてもらえたらと願っています。

編集部まとめ

SNSが全世界に普及している背景には、「人とつながりたい」という人間の根源的な思いがあるのだと納得しました。今、SNSも多様性の時代を迎えています。自分に合ったツールを活用することが、人とのコミュニケーションにもプラスになると今回の取材を通して感じました。伊藤先生、ありがとうございました!