社会交流

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2021.05.19

“誰もが楽しめるスポーツ交流”を、マラソン大会の運営を通して学ぶ。

晴天に恵まれた2021年3月14日、「名古屋ウィメンズホイールチェアマラソン2021」が開催されました。「名古屋ウィメンズマラソン」と同時開催され、今大会で8回目。選手たちが競技用車いす(レーサー)を力強く動かし、10Kmのコースを颯爽と駆け抜けました。

全国的にも注目されるこのスポーツイベントで、ボランティアを務めたのがスポーツ健康科学部の学生13人。ゴールした選手のエスコート、フィニッシュゲートや会場設営などに励みました。コロナ禍での大会運営とあって、学生たちはマスクとフェイスシールドを着用して活動し、感染予防対策も徹底しました。今回、参加学生のうち3年生の勝成望さん、廣中那奈さん、伊熊遥人さん、鈴木大祐さん、2年生の渡邉由夏さんの5人と、学生たちを支える木村華織先生(スポーツ健康科学部 准教授)による座談会を開催。ボランティア活動を通して得られたこと、学んだことなどを語り合いました。

パラスポーツの現場で、新しい価値観に出会う。

編集部:みなさん、本日はよろしくお願いします。まずは、名古屋ウィメンズホイールチェアマラソンのボランティア活動に参加した経緯から話していただけますか?

木村先生:大会を主催する愛知県から依頼があり、2014年の第1回大会からスポーツ健康科学部がボランティアとして携わっています。車いすの選手が必要とするサポートができるように、毎年、参加学生を対象に事前研修会も開いています。

編集部:大会の立ち上げ当初からかかわっているのですね。教育の一環として、事前研修にも力を注がれて。

木村先生:はい。学生たちは普段、さまざまなスポーツ競技をしていますが、パラスポーツに触れる機会はあまりありません。ですから、新たな価値観に出会うといいますか、ものすごく教育的な効果が高いと考えて、これまで8年間、ホイールチェアマラソンのボランティア活動を継続しています。選手と交流しながら車いすの移乗や移動の介助などを実践するとともに、パラスポーツの現場に立って視野を広げてほしい。そんなふうに学生たちに期待を寄せ、送り出しています。

編集部:社会貢献としてだけでなく、教育の面から見ても意義深い活動ですね。学生のみなさんは、どうしてこのボランティア活動に参加したのですか?

勝さん:名古屋ウィメンズマラソンのボランティア活動には高校生の頃から参加していましたが、ホイールチェアマラソンには携わったことがありませんでした。木村先生に声をかけていただき、ぜひやってみたいと思い、今回チャレンジしました。また、出場している選手にはパラリンピアンの方もいらっしゃって、直接お話しできたらなという思いもありました。私も走高跳や三段跳などの競技者なので、同じアスリートとして良い刺激を受け、日々の練習の糧にしたいと考えたんです。

伊熊さん:僕も木村先生から「選手がいっぱい来るよ」と聞き、トップアスリートと直接話せる貴重な機会だなと思って、参加を決意しました。

渡邊さん:私も木村先生の話を聞いて、ホイールチェアマラソンのボランティア活動に興味を持ちました。もともと、名古屋ウィメンズマラソンにランナーとして出てみたいと思っていたことも、参加のきっかけになりました。

廣中さん:私は大学のインターネット掲示板でこのボランティアの募集を見て、参加したいと思いました。何か新しいことに挑戦したいと思っていたんです。

鈴木さん:僕は自治体の行政職をめざしていて、スポーツイベントの運営がしたいという将来への思いがあったので、このボランティア活動に参加しました。運営について学べる絶好のチャンスだなと感じたんです。

きめ細かい事前研修会でヤル気UP!

編集部:みなさん、いろんな思いを持って参加したんですね。事前研修会ではどんなことを学びましたか?

木村先生:年齢や運動の得意・不得意、障がいの有無などの違いをこえて、いろんな人が一緒に楽しめるアダプテッド・スポーツ、パラリンピックの意義など、障がい者スポーツに関することを講義しています。

勝さん:オリエンテーション形式の講義でしたね。最初に資料をいただいて、パラスポーツに関することだけではなく、車いすの扱いに関することや大会当日の運営についても学びました。さらに、グラウンドに出て、競技用車いすや生活用車いすに乗って操作を体験しました。車いすの移乗・移動の介助方法も実践しながら学べました。

木村先生:車いすを腕の力だけでこぐのは、やはり大変。それを自分で体感し、同じ目線で気持ちに寄り添うことが、とても大切なんです。可能な限り講義だけではなくて、実践を交えた研修会にしています。タイミングが合えば、パラスポーツの選手に来学いただいてお話を聞かせてもらいます。そういった事前学修があって、はじめて成り立つボランティア活動だと考えています。

勝さん:「ホイールチェアマラソンのボランティア活動では、本当に良い経験ができるよ。自分の人生や競技に活かせるから、選手との交流も楽しんで、たくさん学んでおいで」という、木村先生の激励の言葉が今も心にあります。事前研修会があったおかげで、みんなで楽しむスポーツの魅力を再認識したし、不安なく活動に取り組めました。

渡邊さん:木村先生は、いつも私たち学生の話を親身に聞いてくださるし、授業でも部活でもわかりやすく指導してくださいます。だから今回、私も臆せずボランティア活動に参加できました。

勝さん:木村先生はアドバイスをくれるときも、指導者側の意見だけじゃなくて「自分の感覚はどうだった?」って学生・選手の気持ちを尊重してアドバイスしてくださるよね。

廣中さん:この大学は話しやすい先生が多くて、先生と学生の距離が近い。その中でも木村先生は、本当に優しくて、私たちを子どものように面倒みてくださって。もう“神”って感じです!

勝さん:わかる!女神様だよね!

木村先生:みんな、ありがとう(笑)。事前研修会で話したように、このボランティア活動では、大きな学びが得られます。キャリア教育という側面においても、パラリンピアンをはじめ、運営する県庁や実行委員の人たちと一緒に活動することで、将来に向けて見えてくるものがたくさんあるはずです。

スポーツが開く、無限の可能性。

編集部:大会当日は、どんなことをしたのですか?印象に残っていることなどを教えてください。

伊熊さん:僕はゴールの設営だったので、選手とあまりかかわることがなかったんですが、最後に少しだけお話する機会があって。「一つの競技を続けられるモチベーションは何ですか?」と質問すると、「楽しいから!」と笑顔で答えてくださいました。やっぱり「スポーツを楽しむ」という気持ちが、トップアスリートの方々にとってもパワーの源なんだなって感銘を受けました。

鈴木さん:僕も伊熊くんと同じで、設営や道具の運搬を主に行いました。「選手が競技に集中できるように!」という一心で作業していましたね。その中で実感したのは、イベント運営におけるチームワークの重要さ。県庁や市役所の方々、ボランティアなど、想像以上に大勢の人が力を出し合うからこそ、一つのイベントがスムーズに運営できるんだなって身をもって学びました。県庁の方が「選手たちが力を出しきり、楽しそうに競技している姿を見ることが、やっぱり嬉しい」とおっしゃっていたことも印象的。将来、仕事としてスポーツイベントの運営に携わりたいという志が強くなりました。

勝さん:私は選手がゴールした後、更衣室に誘導するスタッフを務めました。選手のみなさん、とても気さくに話してくれて、すごく礼儀正しくて。「こんなステキなアスリートに私もなりたい!」って人間的にも憧れる人との出会いがたくさんありました。

廣中さん:私も選手がゴールした後の誘導や着替えの手伝い、競技用車いすから生活用車いすへの移乗介助を行いました。活動を通して実感したのは、コミュニケーションの大切さ。私はコミュニケーションがちょっと苦手な方なので、今回、克服のためにも参加したんです。いま、来年またこのボランティアに参加したい、他のボランティアにも挑戦したいと前向きな気持ちがあふれています。

渡邊さん:私はコースの設営と、選手の後ろを走る車の誘導をしました。当日、予定していた場所と違うところに車が来たりしちゃって、その場で臨機応変に対応するのが大変でした。私は車いすのマラソンを今回初めて見て、まだまだ自分が知らないスポーツがあるんだなと感じました。イベント運営の大変さややりがいも学べたし、貴重な経験ができたと思っています。

伊熊さん:僕も今まで知らなかった車いすの世界を知ることができて、すごい!カッコイイ!って思いました。車いすは普段の生活でも難しいのに、マラソンだけでなくバスケットボールやテニスなどさまざまな車いす競技があって、スポーツの奥深い可能性を感じました。

鈴木さん:事前研修会も含めて今回のボランティア活動に参加してみて、障がい者スポーツのあり方やパラリンピックの現状の話など、本当に多くのことが学べました。交通事故や病気などの苦しい状況に直面したとしても、夢や目標、希望を持って競技に打ち込む姿は、スポーツに取り組む自分自身としても、胸に染みる、心に響くものがありました。

木村先生:パラスポーツの選手たちは、競技に打ち込むとともに、自分たちが活動できる場を増やしたいとか、偏見を減らしたいとか、社会を変えたいとか、さまざまな思いを持って活動されている方が数多くいます。また、ご自身のリハビリテーションとして継続的なトレーニングが必要という側面もあって、いわゆる健常者とスポーツへの関わり方が少し違うところもあります。だけど、スポーツから新しい世界が開かれるということは、誰もが同じ。いろんな人、一人ひとりの違いや共通点に目を向ける、そんな視点もこのボランティアを通して身につけることができたんじゃないでしょうか。

ボランティアでの学びを、次に活かしたい!

編集部:みなさん、素晴らしい経験ができたんですね。では最後に、今後への抱負も聞かせてください。

伊熊さん:今回が初めてのボランティア活動でした。事前研修会で学んでいたけど、いざ現場に立つとわからないことばかりで、指示を待ってしまうことが多くて。自分から動けばもっと貢献できたんじゃないかなって反省しています。またボランティアに参加して、次は自分から動けるようになりたい!

廣中さん:私も、次に参加するボランティア活動では、まわりの人に自分からもっと声をかけていきたい。また、今回は事前研修会や先生のサポートなどが充実していたから、うまくいったんだなと思います。今後、ボランティアに限らず何かに取り組むときは、自分からもしっかりと準備することを大切にしていきます。

勝さん:同じになっちゃうんですけど、私も初めてでわからない中、どうしても受け身になってしまって。自分がもっと臨機応変に動けていたら、全体の運営業務がもっとスムーズに進んだんじゃないかなと思っています。この経験も、良い学びなのかな。次に活かします!

渡邊さん:私も一緒です。さっきも言ったんですけど、車の位置が予定と違っている状況に対して、何が起こっているのか全然わからなくて、あたふたするだけだったんです。何かあっても落ち着いて全体を見て、「じゃあ私はこう動こう」って柔軟に考えられるようになりたい。日頃の学生生活においても。

鈴木さん:僕は、今後もボランティアなどさまざまな活動を通して、多くの人と対話していきたいなと思っています。今回はコロナ禍での大会だったため、選手や運営スタッフの交流が抑えめだったように感じます。ボランティア活動にはいろんな人がかかわるから、そのチャンスを活かして自分の視野を大きく広げたいと思います。

編集部:木村先生から見て、学生たちはボランティア活動を通してどんなふうに成長したと思いますか?

木村先生:ものの見方が変わったと思います。より柔軟に、幅広くなったというか。パラスポーツに触れて、スポーツの可能性、人間の身体の可能性も感じ取ったからでしょうね。そんな“生きた学び”を、これからも学生たちに手渡していきたい。今日、みなさんのお話を聞いてあらためて思いました。

編集部まとめ

障がい者スポーツやイベント運営のことだけではなく、競技に向かうアスリートの姿勢、コミュニケーションなど、いろんな視点で大切な学びを得ていた学生のみなさん。いきいきと話す様子から、とても実り多い活動ができたことが伝わってきました。また、木村先生の学生を思う気持ちや教育への熱も、このボランティア活動が8年間も続いている原動力になっているのでしょう。“神”といわれるほど、学生たちから厚い信頼を寄せられていることも納得でした。勝さん、廣中さん、伊熊さん、鈴木さん、渡邉さん、そして木村先生、ありがとうございました!