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2022.02.03

「スモールビジネス」って何? 新たなビジネスの可能性に迫る!

アメリカなどで起業数が増えている「スモールビジネス」。これからの時代に合ったビジネスのあり方とし て、日本でも注目を集めています。どんな可能性を秘めているのか、経営学部の岡村先生に伺いました。


Profile

岡村 誠 先生

経営学部 経営学科 助教。専門分野はスポーツ経営やスポーツ政策など。地域スポーツクラブの経営課題など を研究するとともに、愛知県スポーツ推進審議会委員を務めるなど社会連携活動にも尽力しています。


時代が求めた、スモールビジネス。

編集部:岡村先生、本日は「スモールビジネス」についていろいろ教えてください。よろしくお願いします。日本でも最近よく耳にするようになって、「小規模なビジネス」というイメージを持っていますが、何か具体的な定義があるのでしょうか?

岡村先生:いいえ。中小企業は中小企業法という法律でしっかりと定義されていま すが、スモールビジネスには法律がありませんし、明確な定義もないのです。ただ、世間ではおっしゃる通り、数名で経営するような小規模なビジネスのことをスモールビジネスと呼んでいますね。個人事業主、フリーランス、ノマドワーカーなど。最近だと、副業もスモールビジネスに含まれるんじゃないかな。

編集部:なるほど。フリマアプリへの出品を副業としていることも、スモールビジネスといえそうですね。

岡村先生:そうですね。実は、スモールビジネスは2000年代にはすでに経営学の分野で研究されてきました。

編集部:すでに20年も前からあったんですね!

岡村先生:スモールビジネスが経営の新たなスタイルとして注目された背景には、時代の変化があります。高度経済成長期を経て人々が豊かになり、科学技術もどんどん進歩していくなかで、個々のライフスタイルや価値観が多様化してきました。多くの人に共通したニーズだけでなく、マイノリティの市場にあるさまざまな少数のニーズを捉える必要性が高まってきたのです。そこで、規模の小ささを活用し、多様なニーズに合わせて柔軟に変化できるスモールビジネスが求められ、発展してきた、というわけです。

編集部:ベンチャービジネスも似たようなイメージがあるんですが、スモールビジネスとどう違うのでしょうか?

岡村先生:ベンチャービジネスにも定義はありませんが、ある程度のリスクを背負って「新事業を興す」ことが、ベンチャービジネスだといえますね。スモールビジネスは「規模」に焦点を当て、小規模という特性を活かした事業を行うのが特徴です。ただ、ベンチャービジネスも最初は小規模な組織からスタートしますから、その点ではスモールビジネスと同じ形態。それが区別のつけづらさにつながっているのでしょう。


ポイントは、どんなニーズに応えるか。

編集部:スモールビジネスのメリットは何でしょうか?

岡村先生:開業資金が少なくてすむこと。もし失敗したとしても失うものが少ないこと。だから、誰もがチャレンジしやすい。それが、スモールビジネスのメリットですね。自分が好きなことから、自分が今できる範囲から、始めやすいという点が一番のよさだと感じます。

編集部:スモールビジネスだったら自分の好きなことで気軽に挑戦できそう! 起業に対するハードルが低くなった気がします。

岡村先生:そうですね。ただ、どうしても不安定なのが、スモールビジネスのデメリットでしょう。開業して数か月は売り上げが0円なんてこともよく聞く話です。収益が伸びていく保証もない、そんな厳しい現状があることも頭に入れておくといいですね。

編集部:いままでのお話を伺って、スモールビジネスはどんな業界・職業でも始められると感じました。

岡村先生:そうなんです。スモールビジネスは業種というより、どういうターゲットやニーズに対応するかに着目して始めることが重要。製造業だと、規格が細かく決められた機械部品を大量生産するような薄利多売型はスモールビジネスに適していません。一方、一部の人が好むようなデザインの服やアクセサリーを生産するなら、スモールビジネスが適しているでしょう。

編集部:やはり「ニーズ」の見極めが大切ですね。

岡村先生:私が以前、妻の実家の酒屋で経営のサポートをしていたときの話です。酒税法改正による規制緩和で大手量販店でも酒類が扱いやすくなったことを受けて、小さな酒屋ですから、経営が厳しくなっていきました。同じ商品を扱っていては太刀打ちできないと考え、全国各地のちょっと珍しいお酒を揃えるよう商品ラインナップを変更。すると、売り上げが上がっていったんです。

編集部:「このお店でしか買えないもの」というのがお客さんを掴んだんですね。

岡村先生:そう。少数だとしても人々のニーズを捉えて、柔軟に経営を変えていきやすいのが、スモールビジネスのよさかなと思います。


学生もスモールビジネスに挑戦!

編集部:スモールビジネスならではの事例は、ほかにどんなものがありますか?

岡村先生:ゼミの学生たちがスモールビジネスに関心があって、私もさまざまな事例を調査しています。その中でユニークだったのが、ある大学生が行った「大型犬の散歩ビジネス」。犬のお世話で毎日の散歩が大切ですが、用事などでなかなか時間がとれないこともあります。そこに目を付けた、散歩の代行をするというビジネスです。しかも、大型犬を飼っている家庭は比較的裕福で、対価もきちんといただける。さらに、大型犬オーナーのコミュニティで評判が広まり、次から次に依頼が殺到して大繁盛したそうなんです。

編集部:すごい着眼点ですね!

岡村先生:人にはいろいろな困りごとがありますから、それを敏感にキャッチして、ビジネスアイデアとして形にできれば、スモールビジネスが成立しやすいと思います。この大学生の事例は、ニーズを的確に掴んだことも重要ですが、なにより、その大学生が犬好きで、喜んで仕事に打ち込めたことがビジネス成功の要因のひとつでしょうね。

編集部:「好き」という気持ちが、ビジネスをよりよい方向に導く力になるんですね。

岡村先生:私のゼミに所属する学生も、昨年、スモールビジネスに取り組みました。コロナ禍のニーズを受けて、マスクのアクセサリーをつくったんです。オンラインショップを立ち上げ、そのサイトに誘導するようSNSも活用したところ、製作した商品は完売しました。あともう一人、動画作成・編集のスモールビジネスを計画中の学生もいます。オープンキャンパスで経営学部の紹介動画をつくって上映した学生なんですが、ビジネスとしてもやってみたいと意欲的なんです。だから私も、学生たちの主体性を尊重して、できる限りのサポートをしたいと思っています。起業することは、“生きた経営”を身をもって学ぶ貴重な経験になりますから。

編集部:すごい!大学で学んだことを活かしてスモールビジネスに挑戦しているのですね。将来の仕事にもつながりそうですね。

岡村先生:働き方が多様化している現代は、かつてのような安定志向よりも「やりたいことを仕事にする」という人が増えたように感じます。

編集部:確かに「働く」ことへの人々の意識も変化しています。子どもたちの憧れの職業の上位にユーチューバーが入っていますからね。

岡村先生:まさにユーチューバーもスモールビジネスのひとつ。職業観・勤労観の変化も、スモールビジネスの発展を後押ししていくでしょう。


スモールビジネスで、よりよい未来へ。

編集部:スモールビジネスを成功に導くには、どんなことをすればいいでしょうか?

岡村先生:最も重要なことは、SNSの活用です。近年のスモールビジネスの成功例で共通するのは、SNSによるアプローチが効果的に行えているかどうか。SNSは誰もが気軽に使えるツールで、世間へのプロモーションもコストをかけずにできます。マイノリティのニーズにもアプローチしやすい。ただ注意したいのは、 SNSの種類。SNSといっても多種多様で機能や特徴が異なり、ユーザーの年齢層もSNSごとに違いますから。

編集部:動画配信だと、若者向けのキャッチーなものはTikTok、大人向けにじっくり説明するならYouTubeといった感じでしょうか。

岡村先生:そうしたSNSの使い分けを試行錯誤することが大事ですね。最近、スモールビジネスが注目されているといっても、海外に比べてまだまだ起業数が少ないのが日本の現状。スモールビジネスなら気軽に始められるともっと知られて、チャレンジする人が増えていくと、日本経済もよりよい方向に変化していくかもしれませんね。

編集部:そう聞くと、スモールビジネスには無限の可能性があるように感じます。

岡村先生:今、社会や人々の暮らしが速いスピードで変化しています。そうした時代の変化に迅速に対応できるのが、スモールビジネス。どんどん変わっていく世の中にアンテナを張り、自分のアイデアを上手く結びつけることができれば、人を笑顔にできる、社会を明るくできる、そんなビジネスを誰もが生み出すことができると期待しています。

編集部まとめ

多様性の時代になったことを背景に、世界中で発展しているスモールビジネス。好きなことで気軽に始めた小さな事業が、もしかしたら世の中をよりよくする新しいビジネスにつながるかもしれないと希望を感じました。岡村先生、ありがとうございました!