健康に関する情報を正しく理解し、わかりやすく伝えることを目的として、学生がさまざまな健康課題について調査・発信しています。本記事は、本学保健室の監修のもと作成しました。今回は「カンピロバクター感染症」について、その特徴や感染予防の重要性を紹介します。
2025年の食中毒患者は2024年に比べて1.7倍に増加し、事件数は1,172件、患者数は24,727人、死者は2人でした。病因物質別事件数では、ノロウイルスが39.4%、アニサキスが23.9%、カンピロバクター・ジェジュニ/コリが18.8%を占めていたそうです1)。カンピロバクター・ジェジュニ/コリは、大気中では増殖できませんが、少量の菌数でもヒトに食中毒の症状を起こします2)。
カンピロバクターによる食中毒は、一年を通じて発生していますが、夏季に好発します。原因は鶏肉が約8割を占めるとされています。しかし、カンピロバクターは、家畜・家禽類の腸管内に生息しているため、生ものや加熱不十分な食肉・レバー等を食べたり、カンピロバクターに汚染された飲料水等を飲むことによりヒトに感染します3)。2023年には、湧水を使用した食事を原因とする大規模カンピロバクター食中毒の発生があり、892名の患者が確認されました4)。また、犬や猫などのペットがカンピロバクターを保菌していることがあり、ペットに触れた後に十分な手洗いを行わずに調理をすることにより、感染する可能性もあります3)。
臨床症状は、発熱、下痢、血便、嘔吐などです。一般的には自然治癒する感染症で、予後良好であり、発症後1〜2週間で治癒し、致命率も低いですが、Guillain-Barré症候群(以下GBS)の合併例では神経学的後遺症が残る可能性があります5)。GBSとは、急性の運動感覚障害を呈する免疫性末梢神経疾患です6)。GBSは末梢神経障害により下肢から筋力低下が始まり、上行性に体幹、上肢へと進み、重症化すると呼吸筋麻痺となる可能性がある病気です5)。
カンピロバクターは、冷凍・冷蔵下でも長期間生存しますが、加熱には弱い細菌です。予防するには、鶏肉を中心とした生肉料理、不十分な殺菌の水や生乳・生乳製品の摂取を避けます。食品を調理するときは、中心部が75℃以上、1分以上加熱します。調理者は生肉を扱う際に、調理器具や手指を介しての食品の二次汚染に注意する必要があります。さらに、本菌は乾燥に弱い為、調理器具や機材の十分な乾燥を心掛けます8)。
また、便中には菌排泄が数週間以上続くので、排便後やおむつ交換後には石鹸による手洗いを励行することも大切です7)。
参考文献
1)令和7年食中毒発生状況の概要. 厚生労働省. 001679199.pdf. (参照:2026.7.3.)
2)カンピロバクター・ジェジュニ/コリ. 厚生労働省. 070627-2b_0002.pdf. (参照:2026.7.3.)
3)食中毒予防のポイント. 食品安全委員会. カンピロバクターによる食中毒にご注意ください | 食品安全委員会 – 食の安全、を科学する(参照:2026.7.3.)
4)カンピロバクター食中毒予防について. 厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/campylobacterqa.html#Q1. (参照:2026.7.3.)
5)新井喜康, 工藤孝広. カンピロバクター腸炎. 小児内科. 2020. 52. 増刊号
6)藤井克則. 多発性神経炎, 多発性ニューロパチー. 小児内科. 2022. 52. 増刊号
7)カンピロバクター感染症. 公益社団法人 日本小児科学会. https://www.jpeds.or.jp/general/prevention/yobo-kansensho/kansensho03-18.html (参照:2026.7.3.)
文責
S124146 谷澤 奈緒(スポーツ健康科学部 中村ゼミ)
東海学園大学 保健室


