健康に関する情報を正しく理解し、わかりやすく伝えることを目的として、学生がさまざまな健康課題について調査・発信しています。本記事は、本学保健室の監修のもと作成しました。今回は、近年再び注目されている「麻しん(はしか)」について、その特徴や感染予防の重要性を紹介します。
麻しんは、麻しんウイルスにより生じる急性の全身発疹性感染症です。感染するとほぼ全例で症状を発症し、カタル期、発疹期を経て回復します。カタル期は最も感染力が高い時期で、38〜39℃の発熱、咳嗽、鼻汁に加え、口腔内にコプリック斑という紅暈を伴う白色の粘膜疹が見られます。発疹期には40℃前後の発熱と全身の発疹が見られます。回復後は生涯免疫を得るため、通常は1回しか感染しません1)。しかし、肺炎、中耳炎を合併しやすく、1,000人に1人程度の割合で脳炎が発症し、死亡する割合も、先進国でも1,000人に1人と言われています2)。また、麻疹罹患後5~10年経過した後に発症する亜急性硬化性全脳炎も重篤な合併症です1)。
日本は2015年に麻しん排除を達成しましたが、2023年以降、海外で感染した人が持ち込み国内での感染が増え3)、2026年3月、日本感染症学会から、米国・英国をはじめ世界各地で麻しんの流行が拡大し、日本でも感染報告が急増しているという緊急注意喚起が発表されました4)。2026年1月〜5月、愛知県では28人の患者発生報告があり5)、2026年6月1日から7日までの一週間で名古屋市では累計5件報告されています6)。麻疹は非常に感染力が強く、咳やくしゃみによる飛沫だけでなく、空気感染もします。換気が悪い室内では、感染者がいなくなった後もウイルスが漂い、感染のリスクが続きます。
麻しんには特効薬はなく、治療は基本的に対症療法を行うしかありません。重篤な合併症を引き起こすと生命に危険がおよぶこともあるので、予防が大切です。しかし、手洗い、うがい、マスクだけでは予防することはできません。感染予防としてMR(麻しん風しん混合)ワクチンがあります。このワクチンの定期接種は2回で、1期は1歳、2期は小学校就学前の1年間です7)。MRワクチンを接種することによって、95%程度の人が麻しんウイルスと風しんワクチンに対する免疫を獲得できると言われています。体に免疫ができると、ウイルスを早期に抑えこむことで発症を防ぎ、感染したとしても症状が軽く、合併症のリスクも下げることができます。周囲の人へ感染を広げてしまうリスクも下げることができるため、ワクチンを確実に2回接種することが非常に重要です。
参考文献
1)森内浩幸. 麻疹. 病気がみえる vol.15 小児科.第1版.東京:メディックメディア. 2022:501‐503
2)麻しん(はしか). 厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/measles/index.html (参照:2026.6.19)
3)麻しんQ&A. 感染症情報提供サイト.https://id-info.jihs.go.jp/relevant-information/measles/faq/features/index.html(参照:2026.6.19)
4)国内外での麻しん症例増加について. 日本感染症学会. https://www.kansensho.or.jp/jaid_measles_warning/jaid_measles_warning-2.html (参照:2026.6.19)
5)愛知県 麻しん・風しん患者発生報告状況(2026年). 愛知県衛生研究所. https://www.pref.aichi.jp/eiseiken/2f/msl/msl_2026.html (参照:2026.6.19)
6)名古屋市感染症発生動向調査情報.名古屋市.https://www.city.nagoya.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/040/784/202623.pdf (参照:2026.6.19)
7) 渡辺博. 小児の予防接種一覧. 小児科診療ガイドライン-最新の診療指針-. 第4版. 東京:総合医学社. 2019:745-746.
文責
S124146 谷澤 奈緒(スポーツ健康科学部 中村ゼミ)
東海学園大学 保健室


