学部からの最新情報
心理学部
2023.01.26

世界の論理学者(数学者)

 ここで紹介するのは数学的論理学の発展に貢献した(貢献している)世界的な研究者の皆さんである。個人的には講義等で指導を受けた先生から、学会や講演会などで講演に接したり、その姿を拝見したレベルまでさまざまであるが、その姿は今も鮮やかに筆者の脳裏によみがえる人々である。
(1)Satoko Titani:筆者の恩師でもあり、また、共同研究者でもある。筆者の論理学研究の方法や方向性を形作っていただいた先生。彼女は直観主義論理や量子論理など非古典論理に関するモデル論的研究の大家であり、それら非古典論理に基づく公理的集合論を発展させた。論理や集合論をモデル論的に追及する姿勢・努力には脱帽あるのみ。
(2)Gaisi Takeuti:イリノイ大学(The University of Illinois at Urbana–Champaign)において数学的論理学や公理的集合論などを教えていただいた。それまで、数学的論理学についてはほとんど素人レベルの筆者でも講義の受講を許可していただき、数学的論理学研究の基礎をつくっていただいた。論理学、特に、証明論研究では世界のトップである。
(3)Saul Kripke:様相論理の世界的研究者。いわゆるクリプキ意味論、可能世界意味論を構築し、様相論理研究を飛躍的に発展させた功労者。筆者がイリノイ大学哲学科の大学院生のとき、学科として彼を専任教員として招聘すべく彼のために哲学科および数学科で講演会を開催したとき、彼のすぐそばでその姿や言動に接し、感銘を受けた。その時の印象は、その立ち居振舞いが、筆者の日本での友人でもある論理学者W氏によく似ていて驚いたことを今でも思い出す。
(4)Jon Barwise:筆者はPh.D.論文の中で「嘘つきのパラドクス」を取り上げた。その中でKripkeの真理論とともにBarwise and Etchemendy両氏の共著”Liar : An Essay on Truth and Circularity”を取り上げた。彼がその共著の出版前にゲラ刷りを筆者に送っていただいたことに今もたいへん感謝している。また、Ph.D.論文の完成前に、彼らの共著に対する筆者の考察の草稿に丁寧にコメントを寄せていただいた。筆者にとっては大切な恩人の一人である。
(5)Dana Scott:様相論理、集合論、オートマトン理論などさまざまな論理学に係る研究の第一人者。筆者の記憶に残っているのは、集合概念を徹底的に分析し、独自の集合論を展開したり、いわゆるBoolean-valued models(ブール値モデル)の構築などでも活躍したことである。彼の友人かつ共同研究者Edward John Lemmon(様相論理研究者) やRichard Montague(言語学におけるMontague Semanticsの創始者)たちと共同ですばらしい研究成果を残している。以前、イリノイ大学で記号論理の学会が開催されたとき、たまたまホテルのエレベータで彼と乗り合わせたが、その鋭い眼光が今も目に浮かぶ。
(6)Rob Goldblatt:筆者が以前ニュージーランドのVictoria University of Wellingtonに1年間滞在していたときにお世話になった。様相論理や代数、圏論などの世界的権威である。その数学的に深い洞察や探求心には脱帽するばかりである。
(7)Edwin Mares:ニュージーランド滞在時にお世話になった論理学者。筆者と同じ非古典論理の専門家で特にRelevance Logicに詳しい。数か月の間、様相論理の完全性定理について1対1で講義をしていただいた。感謝あるのみ。
 
以上の他にもお世話になった論理学者(数学者)が世界の各地にいるが、今は、皆さんに感謝の気持ちでいっぱいである。世界および日本における論理学研究がますます発展することを願ってやまない。
(なお、上記の論理学者の中にはすでに逝去された方が複数いらっしゃる。)
 

東海学園大学心理学部・青山広(専門:論理学および言語哲学)
2023年1月10日