信念や考えと行動は一致しているのか
あなたが今,恋をしていて好きな人に告白しようとしているとしましょう。その時,その好きな人が「あなたのことを好きかどうか」を知りたいと思うでしょう。もし,あなたのことが好きということであれば告白したら受け入れてくれるでしょうし,好きでなければ断られてしまうと予想できるでしょう。この好きな人による「あなたのことを好きかどうか」のような気持ちのことを心理学(特に社会心理学)では「態度」と呼んでいます。態度は「特定の対象に対する評価」と定義されています。ここでは「あなた」という対象に対して「好きかどうか」という評価が,好きな人によるあなたへの態度ということになるでしょう。
では,なぜ人は,そして心理学も人の態度に関心があるのでしょうか。態度を知ることで,私たちはその人の行動を予測したり説明したりすることができると考えられます。例えば,私に対する好意的な態度は告白を受け入れるという行動を予測することが出来ます。また,ある企業は自社の製品に対する消費者の好意的な態度を知ることによって,自社の製品が買ってもらえると想定することができます。
このように,人の態度と行動は一致していることが想定されているために,私たちは他者の態度を知りたいと思うのですが,そもそも本当に人の態度と行動は一致しているのでしょうか。社会心理学では一致する場合と一致しない場合の条件を探ってきました。
エイゼンとフィッシュバインは,行動に対しては態度だけでなく他の要因,特に大切な人からの期待のような社会的規範も重要であると考えました。例えば,あなたは甘いものが大好きでお菓子とかを食べたいと思っているとしましょう。これが甘いものに対する態度となります。しかし,家族はあなたが甘いものを食べすぎて肥満になることを心配しているとしましょう。すると,あなたはただ甘いものが好きで食べたいという気持ちだけで行動するのではなく,家族が心配しているからちょっと甘いものを食べるのを控えようと思うかもしれません。こうなるとあなたの「甘いものが好き」という態度と「甘いものを控える」という行動が一致しないことになります。しかし,家族の心配という要素がなければ,あなたは態度と行動が一致するかもしれません。このように状況によって態度と行動は一致したりしなくなったりするのです。
心理学(特に社会心理学)では,態度と行動が一致する要因について,様々な検討をしています。それによって人の行動をより良く説明したり予測したりできるようになっています。
Fishbein, M. & Ajzen, I. (1975). Predicting and understanding consumer behavior: Attitude-behavior correspondence. In Ajzen, I. & Fishbein, M. (eds.). Understanding Attitudes and Predicting Social Behavior (pp. 148-172). Englewood Cliffs, NJ: Prentice Hall.