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心理学部
2024.02.22

日本国内のカジノに対する心理

 「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」(いわゆるIR推進法)が2016年に成立し、日本国内に合法のカジノが誕生する見込みとなりました。カジノを導入することで、外国人観光客増加などによる経済効果が期待される一方、ギャンブル依存症(ギャンブル障害)の増加が懸念されるなど、2024年現在も多くの議論が続いています。
 
 さて、皆さんは日本国内にカジノを作ることについてどう思いますか?また、賛成と反対どちらの方が多いと思いますか?
 
 このことを明らかにするため、筆者は株式会社のモニターである20歳以上の日本人1505人(女性748人、男性757人、平均年齢:43.62歳)を対象としたウェブ調査を実施しました(調査時期は2020年2月)。「あなたは、日本国内にカジノを作ることについてどう思いますか」という質問に対して5段階で回答を求めたところ、以下のような結果が示されました。
 
 ・「賛成」・・・79人(5.25%)
 ・「どちらかといえば賛成」・・・170人(11.30%)
 ・「どちらともいえない」・・・485人(32.23%)
 ・「どちらかといえば反対」・・・371人(24.65%)
 ・「反対」・・・400人(26.58%)
 
 カジノに肯定的な人(賛成・どちらかといえば賛成)が約16%であったのに対し、否定的な人(反対・どちらかといえば反対)が約51%であり、カジノに対して否定的に考えている人の方が多かったことが示唆されました。
 
 さらに、この調査では「どのような特徴を持った人がカジノに肯定的(否定的)か」についても、探索的に分析を行いました。その結果、「男性」や「若い人」はカジノに対して肯定的な傾向があり、「日本国内にカジノを導入することによって治安が悪くなるのではないか」という「カジノ導入に伴う治安悪化懸念」を持っている人ほど、カジノに対して否定的な傾向があったことが示されました。
 
 カジノにはメリットもデメリットもありますが、その賛否には「治安悪化懸念」などの心理的な側面も影響していると考えられます。心理学は人の心を科学的に扱う学問であり、「日本国内のカジノに対する心理」も研究対象の一つです。将来日本にカジノができた時、上述の研究をはじめとした心理学の知見が役立つことを期待したいと思います。
 
 
参考文献:
高田 琢弘 (印刷中). 日本国内へのカジノ導入に伴う治安悪化懸念および態度に関する探索的検討 犯罪心理学研究
 
執筆者:高田 琢弘 (社会心理学・感情心理学)