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心理学部
2016.05.24

英国国旗の心理学



 上図は、ユニオンジャックの名で知られる英国国旗ですね。正式な国家名称は「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国」になります。
 連合王国の名の通り、この国旗も三つの国旗の“連合”です。白地に赤十字のイングランド国旗(セントジョージクロス)、青地に斜め白十字のスコットランド国旗(セントアンドリュークロス)、そして国旗ではありませんがアイルランドを代表する旗として白地に斜め赤十字のセントパトリッククロスが組み合わされています。ここで注目してほしいのは、斜め赤十字が非対称に描かれていることです。斜め白十字の中央ではなく、4本すべて反時計回りにずらされています。このデザインを心理学的に見てみましょう。
 知覚心理学で「図と地」という問題があります。図は意味のあるかたち、地はその背景です。たとえば日本国国旗(日の丸)を見れば、白い地の上に赤い丸が図として見えます。この図と地の見え方にはいくつかのルールがあり、その一つとして真ん中にあるものは図に見えやすくなります。たとえば、下図の(a)と(b)を比べると、白い帯が真ん中に乗った(a)の方が「黒地の上に白い図」という見え方がはっきりすると思います。英国国旗も、もし斜め赤十字が斜め白十字の真ん中に描かれたら「白地の上に赤い図」という見え方が優勢になるでしょう。
 これをあえてずらしたのは、斜め赤十字(アイルランド)も斜め白十字(スコットランド)も、どちらが地(下)でどちらが図(上)ということはない…つまり対等の関係であるという意味が込められています。英国人らしい配慮と感心させられますが…おや、よく見ると、縦横の赤十字はどう見ても他の模様の図に見えますね。イングランドだけは明確に図(上)なのですね。

髙橋晋也(色彩心理学)