学部からの最新情報
心理学部
2016.07.04

ことばの意味と可能世界意味論

 ことばや概念の意味とは何かという疑問は極めて難しい疑問である。
 
 たとえば、「必然」あるいは「必然性」の意味あるいは解釈として、国語辞典などは「必ずそうなること」とか「必ずそうであること」などという説明を記している。しかし、「必ずそうなる」とはどういうことかと問われると、それ以上の適当・適切な答えはなかなかすぐには思いつかない。
 哲学では、「必然性」やそれと対になる「可能性(偶然性)」という概念について、「可能世界」という概念を使って説明をすることがある。なお、もともと「可能世界」という概念は17世紀から18世紀にかけて活躍したドイツの哲学者・数学者G.ライプニッツが考え出したと言われており、現代哲学や論理学(特に様相論理学)においては重要な概念となっている。
 
 私たちが生きているこの現実世界も一つの可能世界であるが、例えば、第二次世界大戦が発生しなかった世界も一つの可能世界として考えることができる。あるいは、今から10年後に地球が(何らかの理由で)爆発してしまう世界(宇宙)も一つの可能世界と考えることができる。
 そして、例えば、「必然的に、2+2=4 である」という文(哲学的には、命題という)の意味は、
    すべての可能世界において、2+2=4 である
というように理解するのである。そして「2+2=4 であることが可能である」という文の意味を
    ある可能世界が存在し、その世界では 2+2=4 である
のように理解するのである。なお、Aをある文(命題)とし、「必然である」を記号□で表し、「可能である」を記号◇で表すと、「Aは必然である」は「□A」のように表記でき、「Aは可能である」は、「◇A」のように表記できる。
 
 現代の様相論理学では、こうした記号化を利用して、「必然性」や「可能性(偶然性)」についてさまざまな考察をしている。上記の「必然性」や「可能性」の解釈はライプニッツ的な解釈として理解されているが、複数の可能世界の間に「到達可能性(accessibility)」というような概念をさらに導入して、いろいろな「必然性」や「可能性」の意味を考察できる。興味のある人は、様相論理学についてチェックしてみてほしい。
 
青山広(専門分野:論理学、言語哲学)