学部からの最新情報
心理学部
2017.03.30

人文学部心理学科リレーエッセイ(心と香り)

テーマ:心と香り

 春になるといろいろな香りがしてきますよね。花の香りがすることもあれば,何となく春らしい香りがすることもあったりと春特有の香りを感じたことがあると思います。香りには好き嫌いがありますが,多くの人は何らかの香りを嗅ぐことで気分が良くなった,逆に悪くなったといった経験をしたことがあるのではないしょうか。このような経験があるものの,香りを嗅ぐことで本当に気分は変化するのでしょうか。今回は,この春卒業した卒業生の研究論文の中から「香り」と「気分」にまつわる心理学的な研究を一つ紹介したいと思います。
 この研究では,まったく香りが無いもの〈無臭〉,レモングラス,イランイランの3種類の香りを用いて実験が行われました。実験の結果,レモングラスは吸入後に気分の落ち込みと疲労感を低下させ,イランラインは疲労感を低下させることが明らかになりました。さらに,レモングラスの香りを「好き」と答えた人は「嫌い」と答えた人と比べて,吸入後の怒りの低下が大きく,イランイランついては「好き」と答えた人は「嫌い」と答えた人よりも不安感が大きく低下することが示されました。レモングラス,イランイランともにリラックス作用や活性化作用,刺激作用といった効果効能1)があることは明らかにされていますが,今回の実験からも特定の香りを嗅ぐことで気分の変化が生じることが示されました。どうやら香りによって気分の変化が生じることがあるようです。
このことから,自分の好みに合わせた香りを日常生活の中に上手く取り入れることは,気分を安定させることにつながるかもしれません。「香り」は春から始まる新しい生活を穏やかに過ごすための1つのヒントになりそうです。
 
1)Lis-Balchin, M. (2006). Aromatherapy science. A guide for healthcare professionals. 1st ed. London: Pharmaceutical Press.
(田邉和子・松村康生(訳)(2011).アロマセラピーサイエンス 第1版 フレグランスジャーナル社)
 
※本記事は東海学園大学人文学部平成28年度卒業論文「アロマの吸引が心理的ストレスに与える影響について」の著者の承諾を得ています。