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心理学部
2014.07.18

人文学部心理学科リレーエッセイ NO.02

ドイツ国旗の心理学

 1ヶ月にわたり世界中が熱狂したFIFAワールドカップブラジル大会が幕を閉じました。期待された日本代表は残念ながらグループリーグで敗退してしまいましたが、むしろ“自国応援の呪縛”を解かれた決勝トーナメントでこそ、世界トップレベルのプレーを純粋に楽しめたという人も多いのではないでしょうか。

さて、右の図は何か、すぐに分かりますね。見事優勝に輝いたドイツの国旗です。でも何か変です・・・。気づきましたか?じつは、わざと上下逆さまにしてあります。本当のドイツ国旗は、上から順に黒、赤、金(黄色ではないとのこと)です。本物の画像を探して見比べてもらえるといいのですが、同じ3色の組み合わせでも、上下の位置関係を変えるとだいぶ印象が変わるものです。

少しだけ色彩心理学的に解説しますと、ここでは色の違いに加え明るさの違いが印象を左右しています。ドイツ国旗の黒(上)、赤(中)、金(下)はこの順に明るい色になりますが、心理学的に言えば、下に暗い色、上に明るい色を置く配色の方が落ち着いた感じがします。暗い色は重い印象、明るい色は軽い印象を与えるので、下に重い(暗い)色を置く方が安定感を生むのです。上下逆さまにした下図は、まさにそういう配置になっています。逆に言えば、あえて重い黒を上に置くドイツ国旗は何かしら不安定な緊張感を感じさせますが、そこが厳格な国民性イメージともマッチして、独特な配色印象を与えているといえます。

余談ですが、ドイツ国旗の3色は19世紀初めにナポレオン軍と戦った義勇軍の軍服のデザインが由来だそうですが、黒は勤勉、赤は情熱、金は名誉を象徴しているとも言われます。世界の強豪と規律正しくも勇敢に戦い、最高の栄誉を手に入れた今回の代表チームは、まさにこの3色旗の意味をピッチ上で表現してくれました。

髙橋晋也(色彩心理学)