文字サイズ

東海学園大学 HOME > 学部からの最新情報 >スモールステップ

スモールステップ

2018年11月02日心理学部

今日は、いろんなことを確実に上達させるとっておきの方法をお教えしよう。とはいっても心理学でははるか昔から常識になっている方法だ。

上達の原理は簡単である。まず簡単にできるところからやる、少しずつ難度を上げていく、そして継続する。これだけである。これはいわゆるプログラム学習(programmed learning)の原理のうちスモールステップの原理をとてもおおざっぱに言ったもので、原理自体は半世紀以上前に確立されている。

この原理は、動物を使ったオペラント条件づけ実験から生まれてきたシェイピング(shaping)といわれる方法の基本になっている。最初はその動物が簡単にできる行動(自発可能な行動)から始めて、その都度ごほうびのエサを与えながら段々と目的とする行動を習得させていくやり方である。シェイピングを使えば動物に驚くほど複雑な芸を仕込むことができる。動画サイトで「operant rat pigeon shaping」といった語で検索をかければ、この手法が最初に行われた当時の映像を含め、ハトやネズミによるさまざまなパフォーマンスを観ることができる。たとえば、ハトがピンポンをしたり、ネズミがバスケットボールをしたりといった具合である(ただしピンポンといってもハトがラケットを咥えてスマッシュを決めたりはしないので、そのあたりは実際に見てほしい)。

人間は他の動物とまったく違うはずだと思うかもしれないが、こと新しい行動を身につけるという場合、大雑把にいって共通する原則がある。考えてみれば、わたしたちが身につけている多くの行動も、おおむねシェーピングと同じようにして習得してきたといえる。難解な計算問題を解くことや高度なスポーツの技能などはもちろん、ごく身近なところでは、箸を使う、自転車に乗る、スマートフォンの素早い文字入力などなど。今できているレベルのことがいきなりできたわけじゃない。とりあえずできるところから始めて、段階を追って少しずつ上手くなっていったのだ。そして、生活に必要だったり楽しかったりといった理由から、こういったスキルは長期にわたって「練習」が継続されていく。すると、ほぼ自由自在と言えるほどのレベルにまで達してしまう。だから、上達したいことがあれば、何事も楽しくコツコツと、少しずつレベルを上げながら続けるのが秘訣なのである。

河野和明(感情心理学・進化心理学)