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心理学部
2015.04.06

■人文学部心理学科リレーエッセイ NO.09 「原因帰属」


■人文学部心理学科リレーエッセイ NO.09 「原因帰属」


友達が遅刻して待ち合わせ場所に来ない場合に「あいつはいいかげんなやつだから遅刻している」などと考えたことはないでしょうか? 
人は何かの行動をした時に「なぜこの人はこういう行動をとったのだろうか」とその原因を推測します。このことを心理学では「原因帰属」と呼びます。「友達が挨拶を返してくれなかった時」「好きな人が優しい言葉をかけてくれた時」「自分がテストに落ちてしまった時」など,必ず「どうしてそうするのだろう」と考えるでしょう。
人の行動の原因は大きく分けると2種類あります。行動の原因が自分の側にあると考えるのを内的帰属,原因が自分以外の側にあると考えるのを外的帰属と言います。例えば,遅刻したという行動が「いいかげんな性格のためである」と考えるならば内的に帰属した,「公共交通機関の乱れによる」と考えるならば外的に帰属したこととなります。人は他者(ある時には自分の行動でさえも)を必ず正しく原因帰属できるとは限りません。電車が遅れたせいで遅刻したのに,待たせてしまった相手に「あなたはいい加減な性格だから遅れたんでしょ?」と言われてしまうような経験をしたことのある人もいるでしょう。
そもそも,人は「その人がそういう性格だからそういう行動をするのだ」という考え方をしがちです。「優しい性格だから助けてくれる」「怠け者な性格だから遅刻をする」「意地悪な性格だから嫌味を言う」とか,考えたことはありませんか。確かに人の行動の原因の多くは性格から生じていることは多いですが,それでも全てがそうとは限りません。このように,本来ならば外的に帰属されるべき行動を,過剰に内的に帰属してしまう傾向のことを「基本的帰属のエラー」と呼びます。本当はやさしいバイト先の上司を「注意される」というだけで「嫌な性格のヤツだ」と思い込んでしまうような「エラー」を引き起こします。
 また,帰属に関しては「自分へ甘い」ことも知られていて,これを「セルフ・サービング・バイアス」と呼んでいます。自分の成功は内的に帰属しやすく,一方で失敗は外的に帰属しやすくなりがちです。例えば,テストに合格したのは「自分は頭が良いから」と考えるのですが,一方でテストに不合格であった時には「問題が難しすぎた」「体調が悪かったから」と考えたりして,自分に甘く帰属してしまうのです。
 このように,心理学で明らかになっている原因帰属の傾向を知っているだけでも,自分や周囲の人たちのことを,冷静に見ることができるようになります。
 
伊藤君男(社会心理学)