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心理学部
2015.05.08

■人文学部心理学科リレーエッセイ NO.11 「内向性と外向性」

■人文学部心理学科リレーエッセイ NO.11 「内向性と外向性」

新年度がはじまり、1ヶ月以上が経ちました。
新入生はもちろん、就職した卒業生も今までとは異なる環境に身を置くことになり、多くの新しい経験や出会いがあったのではないでしょうか。この時期には歓迎会や懇親会などの行事も多く、人との交流もいつもより活発に行われています。
本学の心理学科においても、4月には多くの行事が行われ、歓迎会も開かれました。こういった場所で、初めて会う人と交流することはとても貴重な機会ですし、新しい環境に適応するうえでは役に立つことでしょう。
一方で、こういった場所で積極的に話すことが苦手で、参加することにも消極的な人もいます。パーソナリティ(性格)心理学の分野においてはこのような性格は「内向的」であると呼ばれています(もちろん、その反対は「外向的」となります)。もしかしたら、内向的な人はこの時期は少し気が重かったのかもしれませんし、こういった性格を変えたいと考えているかもしれません。
世間一般では活発で社交的な人が評価される一方、内向的である人々は窮屈な思いをしたり、損をしていると感じたり、そういった自分を修正しようとすることが多くあると言われてきました。
しかし、近年は内向的な人にこそ素晴らしい能力やスキルがあり、それを評価しようという考え方も広がっています。
内向型人間が社会を変える、という本はアメリカでベストセラーとなり、多くの人に影響を与えました。日本においても内向型人間の時代というタイトルで翻訳書が出ていますので、興味がある方はぜひ手に取ってみてください。
確かに懇親会などで積極的に話を盛り上げて、普段からエネルギッシュで活動的に過ごしている人は社会においてネットワークを広げ、成功しそうな印象があります。
就職活動においても有利だという話を聞いた人もいるのではないでしょうか。
ユングの理論を元に開発されたパーソナリティ検査(内向型と外向型かどちらかを調べる心理検査)が広がった時には、外向型に分類されるのは半分の人であるにも関わらず、ほとんどの人は「外向型の方が良い」と答えたそうです。すなわち、多くの人が「性格は外向的な方が望ましい」と思っているようです。
しかし、内向型人間はその場の空気に流されて誤った判断をしないことや、行動の前には熟慮してぶれないといった傾向があるという長所が示され、内向型人間を尊重することが社会にとって有益であるといった議論がなされるようになりました。
なお、欧米と比べるとアジアには内向型人間が多いというデータなども紹介されています。
自分が内向的で自信がなかったり、あるいは懇親会などで居心地の悪い思いをしている人はぜひ内向型について学んではいかがでしょうか。きっと、自分の良い側面が見えてくるでしょう。また、どちらの性格が良いとか悪いとかいった議論も不毛なものだと思えてくるかもしれません。
さて、ここまでは内向的な人の肩を持ちましたが、内向的な社員は外向的な社員よりも仕事の成果を適切に評価しないといったことが近年のオレゴン州立大学での研究結果として報告されています。内向的な人はパフォーマンスが同じであれば外向的な人の仕事よりも内向的な人の仕事を高く評価し、高い報酬を与えようとする一方で、外向的な人は性格で評価を左右しないという結果が示されています。
私たちは、活動的でおしゃべりな人が、おとなしい人を軽んじていると思いがちですが、実は内向的な人が自分と同じタイプを好み、排除的だということも考えられるでしょう。
いずれにせよ、どういった性格が好ましいと言った話をするよりも、自分の性格も他人の性格も認め合い、その本質を深く知ることが重要だと思います。

 谷伊織(パーソナリティ心理学)