臨床心理学を専門とする者の役割
2月5日に心理学部の1・2年生を対象とした少年院の見学実習が行われました。「心理学部の学生がなぜ少年院に?」と思われた方も多いのではないでしょうか。少年院とは,「家庭裁判所から保護処分として送致された少年に対し,その健全育成を図ることを目的として,矯正教育,社会復帰支援等を行う法務省所管の施設」であり,おおむね12歳から20歳までの少年が収容される※1と定義されています。この定義を読んでもまだ「心理学部の学生がなぜ少年院に?」と思われる方がいらっしゃるのではないでしょうか。
多くの方がイメージされる臨床心理学を専門とする者(公認心理師あるいは心理職)の職域あるいは仕事内容は「医療現場でのカウンセリング」ではないでしょうか。もちろん医療現場でのカウンセリングもその1つであり間違いではありません。しかし,医療現場以外にも福祉,教育,産業,司法・矯正といった領域も臨床心理学を専門とする者(公認心理師あるいは心理職)の職域に含まれています。この司法・矯正の領域に含まれているのが少年院です。少年院で働くことができる公認心理師(心理職)の数は限られていますが,それゆえそれぞれが担う責任はとても大きなものといえます。このように,心の専門家という言葉からイメージしにくい領域も臨床心理学を専門とする者の役割が求められています。その仕事内容は多岐にわたるため,人と関わる力,人をみる力,見立てる力,計画・実行する力などが必要とされます※2。つまり,臨床心理学を専門とする者に求められている役割はその幅は広く,そして奥行きは深いということが言えるのではないでしょうか。
皆さんがイメージされる心の専門家の役割と実際に求められている専門家の役割には少し乖離があるかもしれません。公認心理師(心理職)に興味がある方は,一度それぞれの領域の仕事内容を調べてみてください。驚くことがたくさんあると思います。
心理師(心理職)が活動する領域(※1より)
医療 | 病院・診療所/保健所/精神福祉センター/リハビリテーションセンターなど |
福祉 | 児童相談所/療育施設/心身障害者福祉センター/老人福祉施設など |
教育 | スクールカウンセラー/教育センターなど |
産業 | 企業内相談室/企業内健康管理センター/公立職業安定所など |
司法・矯正 | 家庭裁判所/少年鑑別所/刑務所/少年院など |
※1 藤岡淳子(2018).司法・犯罪分野② 子安増生・丹野義彦(編) 公認心理師エッセンシャルズ(pp. 150-155) 有斐閣
※2 必要とされる力は少年院で働く心理職だけに求められているものではありません