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心理学部
2020.12.18

ギリシア国旗の心理学

国旗心理学者(笑)の高橋です。ご愛読者の皆さま、お待たせしました! シリーズ第5弾をお届けします。

今回はおなじみのギリシア国旗です。今年あるはずだった東京オリンピックの時期にタイムリーに掲載する予定でしたが、すでに機を逸しましたね(汗…)。

さて、あらためてこの国旗を見るとなかなか味わい深いです。そもそも、2色旗でここまで複雑なデザインのものは珍しいです。構図的には、左上の青地白十字とそれ以外の青白9本縞に分かれます。9本縞は、ギリシア独立戦争(1821年~)の折りの掛け声「自由か死か」という言葉の音節数を表しているとのこと。また十字は、戦争時、パトラという町で反乱を呼びかけた聖職者が白地青十字(現デザインと色が逆)の旗を掲げたことに由来し、ギリシア正教への忠誠心が込められているそうです。何事にも歴史がありますね。

さて、肝心の心理学的な考察ですが、ここでは縞と十字の白の見え方に注目しましょう。同じ白であるにもかかわらず、何となく…ですが、十字の白は明るく鮮やかに、縞の白は幾分暗くくすんで見えませんか? これは、第2回の英国国旗のときにもお話しした図と地の問題になります。十字の白は図に見える(青い地の上に白い十字が乗っている)のに対し、縞の白は地に見えやすい(白い地の上に青いストライプが乗っている)ためです。青は海と空、白は自由を求めて戦う人々の純粋さを象徴するそうですが、ギリシア国民にとってはどちらの色も等しく大切(=図として見える)ということでしょうか。

さて、2021年7月、新国立競技場の開会式で先頭を切って入場するこの旗が見られますかどうか…。
 

高橋晋也(知覚心理学・色彩心理学)