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2023.07.13

「チャットGPT」など対話型生成AIとの向き合い方について

学生の皆さんへ

日頃、勉学に勤しんでおられることと思います。
 
昨今、話題になっている「チャットGPT」「Bing Chat」「Bard」などの対話型生成AI(以下、「生成AI」)について、考えてほしいことがあります。対話型生成AIとは、「自然言語の生成AI技術を活用した対話型ツール」です。インターネット上にあるあらゆる情報をもとにして、絵や文章、音楽などを作成する人工知能(AI)のことです。「本人」に「対話型生成AIとは何ですか。小学生に分かるように教えて下さい」と聞いてみた所、「大量のテキストデータや会話データを学習し、その中から言葉や文法のパターン」を学び、「それにより、人間のように自然な会話を行うことができる」そうです。著作物は人が手間暇をかけて作られていますが、生成AIを利用することで、その労力や時間を大幅に短縮できます。その便利さは、国や自治体の機関、会社等の事務作業を大幅に軽減することが期待され、すでに取り入れている組織もあります。例えば愛知県では、文書の作成やアイデアを生み出すという業務で試験的に利用することを検討しています。
 
しかし、次のような問題点も指摘されています。まず、機密情報の漏洩や個人情報の不適正な利用につながる点です。個人データを安易に入力すると、AIはそれを学習し、特定の個人について不適切な情報を出力する可能性も指摘されています。また、剽窃や著作権の侵害も懸念されています。オリジナルの著作物そっくりに生成することもあり、著者やクリエーターの権利を侵害するおそれがあります。安易に利用すると意図せずして剽窃につながることがあります。さらに、生成された文章などの信憑性です。生成AIには未完成な部分もあり、出力された内容の真偽まではチェックされません。何より、現段階では、インターネット上にある情報でしか生成できないという限界があります。
これらの問題もいずれ解消されてゆくことでしょうが、現状では、実生活で使うためには不足する部分があるのです。
 
そして、考えてほしいのは、教育現場における生成AIの利用についてです。
小学校や中学校の子どもたちは、生活の中で見つけた課題などを解決するために「思考力、判断力、表現力」などを身につけるため日々学習しています。高校生は「豊かな人間性」や「創造性」を養っています。大学の役割は、教育基本法で、「学術の中心として、高い教養と専門的能力を培うとともに、深く真理を探究して新たな知見を創造し、これらの成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与」することとされています。つまり、どの学校においても、子どもたち、学生たち自身が考えること、創造することがその目的である、と明記されているのです。
 
利用の仕方によっては、より質の高いレポートや論文、作品を創り出すための、有能な「助手」になることでしょう。大学での学修をより効果的にするため、一律に利用を禁ずることは相応しくないと考えます。しかし、考えること、創造すること自体をすべてAIに任せてしまっては、上に示した学校の目的、大学の使命を達成することはできません。例えば、成績評価にかかわるレポートや論文等を作成する際に、生成AIを利用し、出力結果をそのまま利用するという行為は適切な利用とは言えません。科目担当者の許可もなく、生成された文章を自分で書いたかのように装うのは、不正行為(東海学園大学試験規程第8条第1項第10号「剽窃行為」)に等しいものであり、厳正な対処を取らざるを得ません。
 
対話型生成AIと上手に向き合い、大学生であるという矜持を保って勉学に励んで下さい。
 
令和5年7月13日
東海学園大学 学長 石川 清